1. はじめに
今回は札幌市営地下鉄で快速運転を実施できないか検討してみようと思う。ここで今回は,JRとの競合があり,工夫次第で快速運転が可能な東西線に着目していこうと思う。
2. 南郷7丁目駅の中線について
南郷7丁目駅は札幌市営地下鉄で唯一,2面3線の設備を持つ駅であり,中線が存在する。この中線は始発電車とおよびその留置の他には月に2度ほどある東豊線車両の臨時回送くらいしか役目はない。日中はほぼ空でほぼ使われていないと言えるこの中線を活用して,快速運転ができると考える。
3. 快速運転ダイヤ案
仮に快速運転を実施する場合,以下の点に留意する必要がある。
1. 前の列車に影響がないこと
2. 後続列車に影響しないこと
3. 快速通過駅も十分なサービスを提供できるようにすること
以上の点に留意しながら快速運転ダイヤ案を検討していこうと思う。
札幌市営地下鉄は日中7分間隔とそれほど過密なダイヤではない。これは快速運転を行う際に有利な点と言える。快速電車は各駅停車を追い抜くことが予想されるが,仮に各駅停車が日中7分間隔で運行されていた場合,1本各停を追い抜くと,さらに1本前の追い抜くには7分分先に進んだ電車を追い抜かなければならず,札幌市営地下鉄の路線の長さでは不可能である。今,「不可能」とネガティブな表現を使ったが,札幌市営地下鉄で快速運転を行うとき,これは不利な点とはならない。
なぜならば東西線には南郷7丁目の他に退避設備がなく,快速は1本しか各停を追い抜くことができないので現状設備の過不足がなく丁度いいからである。さらに,1本しか各停を追い抜かなくても,日中時間帯の運行間隔の長さゆえに,前の各停には追いつけないのでダイヤに無理なく,速達性も実現できる。
また快速運転を実施することで南郷7丁目以前,以降で乗る電車を分散でき,混雑が緩和するという効果も予想される。
以下に具体的なダイヤ例を挙げてみよう。ただし,快速は新さっぽろー大通間はノンストップとする。
<新さっぽろ駅発車時刻の例>
09時53分 各停A
10時00分 各停B
10時05分 快速
10時07分 各停C
以上のダイヤでは,現状の各停に快速を加えている(10時05分)。この快速は10時05分に新さっぽろを発車すると,1本前を走る各停Bを南郷7丁目駅で追い抜く。快速は大通方面へ向けて走るが,南郷7丁目の時点で前を走る各停Aとは7分差があり大通までに追いつけない。したがって,快速は各停に追いついてノロノロ運転になることはない。また,各停Cは新さっぽろ駅を快速発車2分後に発車するが,快速の方が早いので,この各停が快速に追いつくことはない。以上より,前述の留意すべき点1,2を満たしている。
さらに先に示したダイヤ案では現状の各停を減らすことなく快速を加えただけなので,快速通過駅も今まで通り日中7分間隔が維持され,サービスの低下はない。これで留意すべき点3も満たす。
4. 課題
快速運転を行う課題もある。一番大きな課題は需要の低さではないだろうか。
仮に新さっぽろー大通間をノンストップで走る快速が存在したとして,何人が利用するだろうか? 新さっぽろから大通に向かう人は7両編成の8000形では輸送力が余ってしまう。他社に焦点を当てると,通常は快速の方が各停よりも混む傾向がある。新さっぽろ駅は東西線で大通駅に次ぐ利用者数を誇るが,新さっぽろー大通間の快速を走らせたところで,各駅に停車する各停の方が混むのは目に見えている。
快速運転を行うとして,どのように課題を解決すればいいか考えてみた。
A. 南郷7丁目に快速を停車させ,各停に接続
この案であれば,快速には新さっぽろから乗車した人に加えて,南郷7丁目以前の区間で各停を利用した人の乗り換えが見込まれ,それなりの需要が見込まれる。
この案のメリットは同ホーム上での乗り換えであるため,各停⇒快速,快速⇒各停の乗り換えがスムーズなことである。
一方,デメリットとして,各停は南郷7丁目駅到着後,後続の快速の到着・乗降・発車を待つ必要があり,快速通過駅で降りる人の所要時間が増す。
B. 南郷13丁目に快速を停車させ,南郷7丁目は通過
この案の場合,南郷13丁目以前の区間の利用者が南郷13丁目まで各停を利用し,そこから快速に乗れる。そのため,南郷13丁目以前の利用者の速達性が図れると共に快速の需要も増す。一見,おかしな運用に見えるかもしれないが,東京メトロ東西線などでこのように待避線のない駅で各停⇔快速の乗り換えを行う例は実在する。
大きなデメリットはないが,南郷13丁目駅の2015年における利用者数(乗車人員)は6848人であり,札幌市営地下鉄46駅中37位と決して多くはないことから停車理由を利用者に説明しなければならない。ただ,運用上は合理的である。
C. 快速を4両編成で走らせる
東西線の線路は東豊線の車両も走ることができる。このため,需要が低いならば短い4両編成の東豊線の車両を走らせることで無駄を少なくできる。
ただ,この場合,東豊線の車両が不足してしまう恐れがあり,車両の増備となると大きな費用がかかってしまうことが難点である。また,交通局は東豊線の車両を東西線で営業運転させるのに消極的なところがあるのであまり現実的ではない。
D. JRからの乗り換え客を呼び込む
新さっぽろ駅はJRと乗り換え可能な駅である。JRの客を地下鉄に誘導するため,初乗り運賃を下げたり乗り継ぎ運賃を割り引いたりすることで利用しやすくなる。
しかし,前者は全線にその料金を適用する必要があるため非現実的である。後者もJRとの協力が必須であるが,JRにとっては全くメリットのない話であり,こちらも頓挫するに違いない。こういった取り組みは鉄道会社が多数存在する首都圏などで例えばA社とB社が協力し,J社に勝つなどの目的で実施されるが,札幌の場合,これには当てはまらない。
結局,どの案がいい?
色々案を妄想してみたが,もし実現するとすれば費用が掛からず,なおかつ他社の協力や運賃の値下げを必要としないA案かB案であると考える。個人的にはB案の方が各停の利便性が比較的維持されるので良案と考える。
5. まとめ
以上,もし札幌市営地下鉄で快速運転をすればという妄想を書いてみたが,新さっぽろー大通間は比較的所要時間が長いこともあってやってみるのもありだと思う。また,最近では8000形方向幕のフルカラー化が進んでいるが,種別表示も以前よりしやすくなったであろう。
実際に快速運転を行えばどうなるか,実験的にやってみる価値はあると思う。
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